2019年11月03日

失意のバドーフ

silver-wham.jpg

かなり前に書いたこと(削除)だが、やはり曲の良さで買ったシングルにシルバー「恋のバン・シャガラン」がある_この曲は「バンドの意向に反する部外者ライター作のポップチューンだが押し付けられ仕方なしに録音、ヒットはしたがバンドは即解散」と。
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進行中のデザイン仕事「ワーナー・ポップ・ロック・ナゲッツ」新規2W。解説をレイアウト…校正は僕の仕事ではないが、まあいつも目を通しながら進める。中に、興味深い箇所があったので書こう。収録のバドーフ&ロドニー曲に関して。
このフォーキー・デュオはAtlanticの大将アーメット・アーティガンに認められデビュー。そのファーストLPはマッスル録音だった(僕のマッスル・アーカイヴにも)。よほどマッスルが気に入ったのかアーメットはかなりのアーティストをマッスルへ送り込むが、個人的にはこのファーストは当時は知らなかった。Asylum移籍したセカンド『Batdorf & Rodney』_SSWブーム/アサイラム・ブームがあって音楽誌にこの盤は紹介されていたからここからは記憶にあり。しかしさしたる話題にならず、デュオはまたも移籍。3枚のアルバムを違うレーベルからリリースしてポシャったという珍しいパターン。最終3枚目はArista から。トム・セラーズ・プロデュースの元、AOR路線…ぶっちゃけ売れ線狙いだったがこれも失敗。
さてここからだが、ポシャる前、3枚目も伸び悩む際に登場がAristaの親分クライヴ・デイヴィス。元弁護士だったかな、コロンビア社長から独立してArista設立しバリー・マニロウ/ホイットニー・ヒューストンらを売りまくったやり手。バドーフ&ロドニーのふたりに、失敗で終わらせぬとばかりに売れ線曲を見繕った。2曲を提示してどちらかをシングルで出せと命じた。カントリー系チームの書いた "somewhere in the night" と "Wham Bam (shang-a-lang)" 。2曲ともに録音するが2人が選んだのは前者で、そのシングルにはしっかりと produced by Tom Sellers & Clive Davis と表記入り。が、これもやっぱりコケる(とはいえ69位、微妙なところ…)。ここでデュオは解消。バドーフのほうは新バンド結成、これがシルバーとなった。ここでクライヴ曰く_その新バンド、"Wham Bam" でシングル・デビューするならアリスタと契約。バドーフ的には売れ線狙いを嫌悪していた。とはいえ契約なくては元も子もなし、提案を渋々了承。LPのほうは自由に作らせてもらう!と意気込んでいたのだろう。
アリスタからの唯一盤『Silver』、ブレント・ミドランド作・歌の "musician (it's not an easy life)" で始まる。ラストはバドーフ作の失恋ソングだがタイトルが "goodbye, so long" とは意味深。制作中から1枚でこのバンドも終わらせようとでも考えたか。バドーフ、理想の活動はままならないと痛感し通しだったのではないか。
というのも、アルバムに先行してクライヴ要求通りに "Wham Bam(恋のバンシャガラン)" はリングル・リリースしたが、それはバンドとしてリレコではなく、ロドニーとふたりで録ったテープの使い回し。ロドニーの声のみ消してメンバーでのコーラスをオーバーダブしたらしい。それほどにバドーフとしてはやる気ないリリースだった…のに、これが全米16位のスマッシュ・ヒットを記録。アルバムは100位までにも入らなかった。クライヴの目利き勝利だった感あり。いや、ヒットだけが全てではない。アルバム『Silver』はいいレコードだ。やはり "musician" が光る。楽じゃないぜ、この仕事_音楽業界で食っていくってのは、マジしんどいぜ〜…≠ニ歌われる超メロディアスなスロー楽曲。後にGrateful Dead のデス・シート(キーボード席)に座り、その通りに早世してしまう悲運なミドランドの musician life を振り返って、より強く沁みることとなる。最近竹内まりやがカヴァーして話題(か?)。
個人的にはこのバンド、痛し痒しの面も。LPも好きだが、バドーフが忌み嫌った「バンシャガラン」も、前述通りにシングル買いしたほどに好きなんだ。完璧、これほどによく出来た曲もそうはない。キャッチーなメロ、思わず口ずさむリフレイン、流麗なストリングス・アレンジ…これでヒットしなけりゃ嘘でしょ位で、その通りのヒットとなった。その意味ではクライヴ・デイヴィスの眼力には脱帽。つまりは、ロック派的LP礼賛とポップス派的シングル脱帽、ともにあるんでね…。
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そのクライヴ・デイヴィス。アリスタ前のコロンビア時代のこと。新人<uルース・スプリングスティーンのデビュー作『アズベリー・パークからの挨拶』の録音途中でラフ・ミックスを聴いて「売れそうな曲がない」と指摘したそうな。そこでボス、書いて足した2曲が「光で目もくらみ」と「spirit in the night」。クライヴのヒットを狙う鋭い感覚は認めざるをえないだろう。この両曲をカヴァーしたマンフレッド・マンもね。


https://youtu.be/M5iSEdo5VNI 
バンシャガラン:ベースがeaglesバーニー・レドンの
弟というのもちょいと話題だったシルバー

https://youtu.be/geMC_LDXt1Y ミュージシャン

posted by denny-0980 at 06:32| Comment(0) | Assorted | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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