2017年05月06日

贔屓筋シャピロ

#165
【Millie Jackson / a moment's pleasure】
produced by Brad Shapiro & Millie Jackson
( '79 Spring)
<ー:★★>

Muscle Shoals Sound Studios を一番贔屓にした/利用した人物といえば…贔屓は当たらないか、なにしろ当事者である、ジェリー・ウェクスラー。マッスル四人衆にスタジオ開設の資金援助までした人物。当方の読みは、Fame のリック・ホールと折り合い悪くなったウェクスラーがベケット/ジョンソンらをけしかけた結果の新スタジオ…と思っている。プロデューサーとして何枚ものアルバムをこの場所で録ったウェクスが、マッスルいの一番。
パフォーマーとしては、過去には「ボビー・ウォマックが一番の贔屓筋だった」と書いた。しかしこのミリー・ジャクソンも多い…ウォマックより多いかもしれない。それほどに多いのはひとえに後ろ盾のブラッド・シャピロがいたから。シャピロ、もともとマイアミがベースの人なんだが、ウェクスに負けず劣らず録音にはつねにマッスル・スタジオを使ったプロデューサー。Spring / Kayvette レーベルがらみの大半、Facts of Life, Brandye から ex-FREE のアンディ・フレイザー盤まで。

この79年盤、スタジオ表記は Muscle Studio/Alabama, Sound Suite/Michigan, Sound Shop/Nashville, Sterling Sound/NY _なので日本盤ライナーには「録音は四カ所」と。分かってない…。まずNYの Sterling Sound といえば知られたマスタリング・ラボ、ゆえにここではマスタリングのみ。ナッシュヴィルは Spring レーベル・オーナーの Ernie Winfrey の持ちスタジオでここはミックスだけのはず。弦とホーンのアレンジがデトロイトの人、David Van De Pitte とあるからミシガンでは弦・ホーン録り。なので、全曲のベーシック録音はマッスルサウンド1カ所で行われた盤。それは、Rhythm arranged by Shapiro, Jackson and the Muscle Shoals Sound Band Section の表記でも知れる。演奏メンバー記載は全員マッスル・メンバーの以下8人のみ:Hawkins / Hood / Johnson / Beckett / Larry Byrom / Randy McCormick / Tom Roady / Clayton Ivy 。まあマッスル深追いを続けているから分かること。とはいえ、日本盤のライナーは、依頼仕事を適当にお茶濁しというのが知れる薄っぺらな内容(「マッスル・ショールズ」の文字がまったくなかったり…)。

その内容と来て…いつものエロとエグさは抑えめのミリー姐御。スロー・ナンバーに若干「聴ける」箇所がないではないが、全体はメロディに冴えのない「ディスコ」、時代的にかなりディスコに色目。ホーキンスのドラムからしてバスドラべた打ち、リンドラム使用なのだからいやになる。フッドもチョッパーを入れる。ラリー・バイロムがリード・ギターだが、元ステッペンウルフという経歴のマッスル・ギタリストも器用にディスコ倣い。スタジオ・ミュージシャンだから依頼によって何でもアリが当然とはいえ、こうまですんなりこなされると器用ゆえに逆に悲しい感あり_なにしろ南部の一番星、マッスル・ショールズ・リズム・セクションなのだから。
タイトル・トラックはマッスル・ライター George Jackson 作で、"i've got use my imagination" を思わせる_唯一サザンな楽曲。前年のエグザイルの全米1位 "kiss you all over" のカヴァーも収録(作はチャップマン=チン)で、これが一番メロディとしては光るのだから不出来な盤といえるだろう。

69年の開始からこの盤は10年目。ここらが「マッスルの終わりの始まり」だろう。つまりは、栄光のマッスル・スタジオはまるまる70年代、ワン・ディケイドでお役御免だったことになる。


posted by denny-0980 at 06:22| Comment(0) | TrackBack(0) | Muscle Shoals | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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