2018年02月11日

French Disque by Muscle

下に、レオン盤でのマッスル勢参加曲が「らしくない」と言った。deep な southern taste にあらずという意味だが、思えば正確ではない。マッスルショールズ・スタジオ、当たり前に「商売」…何でもあり≠ナあった。あるときは Kazuhiko Katoh という「日本人」がブッキングしてきた、はて日本語で歌うというがどうしたもんじゃらホイ…と思ったことだろう。
 さらにここに謎のディスコ≠ェある。この盤もマッスルと気付いたのは随分と前のことだが、ここにきて玉(音源)がUTに揃っているので一気に書いてしまおう。

76年盤『Boule Noire』というフランス盤がなぜかマッスル録音らしいと知った。それもディスコと…。しかしジャパニーズのマッスル詣でよりもフレンチのそれのほうがマッスル側にしてみれば違和感少なかったかもしれず。この盤、たしかにフランスでも出ているが discogs 等でいろいろと分かってきた、どうやらカナダ盤がオリジナルの様子。ケベック地方など「フランス語圏」が存在するカナダであったな(ケイト&アンナ・マクギャリグル姉妹はフレンチでも歌っていたヨ)。
ブール・ノアール、バンドと思っていたらそれは勘違い、George Thurston というカナダ・シンガーの変名だった。
そして、これも謎だったマッスル録音盤『Toulouse』…繋がった。カナダはモントリオールのディスコ3人女性グループ。ブール・ノアール、トゥールーズ、共に Steven Grossman という人物が裏方/仕切りでこの御仁がマッスル贔屓であったと…当方はみる。
どちらの盤もリリースはいい加減、何度かのマッスル・セッション曲を組み合わせて数枚を出しているようだ。
時代ゆえにディスコ録音のお鉢がマッスルまで巡ってくる…それもアリだろう。が、なんでわざわざアラバマのど田舎へ? 想像だが、たとえばそのグロスマンなる御仁の妹がじつはベケットの嫁…とか、なんらかのパーソナルな繋がりがあったのでは。
そしてこれも疑問というか…、けっこう「マッスル勢はノッっている」。まず演奏のみならずプロデュースも共同でしていたり、人員的にも4人衆からピート・カーも、マッスル・ホーンズも揃って参加。楽曲のなかにインストも含まれていて、それはホーンズ4人衆(イーズ/ローズ/キャロウェイ/トンプソン)が嬉々としてプレイしていたり。それと楽曲のいくつかの共作者としてベケットの名前まである。ディスコ好きなんかい?_と問いたいほど。クレジットをみれば、やはりストリングス入れはクライテリアで行われている(お馴染み、マイク・ルイスのスコアで)。クライテリアは当時、ビージーズがディスコヒット連発のための居城にしていたスタジオでもある、そんな時代か。

toulouse_credit.jpg


https://youtu.be/GzUl26xUE2U
ホーキンスのドラム…悪くない

https://youtu.be/5bpjPyFkq50
ピートのギターが…悪くないワ


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松下某のようなブラシイラストのファースト

boule noire.jpg

Boule Noire 盤もブラシイラスト

toulouse_fr.jpg
こういうお姉様方であった…



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ひとつ気付いた事がある。ブール・ノアール(ことジョージ・サーストン)の78年盤『aimer d'amour』、les disques martin レーベルから出ている…バリバリに仏語盤だがやはりカナダから。これはマッスル録音ではないが、mixing に Steve Hamm の名もあるので一部はマッスルでのミックスダウンかもしれない。この盤のクレジットでドラムに " Richard Tate " の名があった。
遡るに、わがマッスル掘りリストの #043 が『Richard Tate』という盤。いったい誰や知れず盤ではあったし入手できると思っていなかったが、あるレコードフェアのエサ箱であっさり見つけた時ははっきり覚えている。そのときは驚喜したんだが、聴けばどうにもプアな内容だったな…とうの昔に処分してしまって今ではさっぱり記憶ない。
ひさしぶりに出会ったリチャード・テイトの名前。リストアップしたのは77年 ABCからの同名盤だったがいまdiscogsをみれば前76年にも同名盤を、それは les disques martin から。こちらはカナダ向けのフレンチ・アルバムで、ABCのはアメリカ向けに全曲英語で歌っていたようだ。見ればこのカナダ盤も完全マッスル録音_その1曲目がこれ:
https://youtu.be/N8JrQ6x0n6Y
ばっちりとマッスルではないか。ギターはピート・カー、アウトロで弾きまくってフェイドアウトの得意技。
リチャード・テイト…discogs には "Quebec drummer and singer" とある。カナダ/フランス語圏チームの一員であったか。

posted by denny-0980 at 13:47| Comment(0) | Muscle Shoals | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月04日

Swamper album

leon-russell-sw8903-2-ab.jpg

#000
【Leon Russell and the Shelter People】
produced by Russell & Denny Cordell
('71 Shelter)
<ー:★★>


この盤をマッスル・リストに入れるかどうか悩むが、やはり参考盤扱いに。ある意味では重要盤なのだが、マッスル勢はほぼノータッチゆえ。

まずレオン・ラッセル…正直趣味でない、声も苦手。唯一『stop all that jazz』だけが愛聴盤で、このソロ2枚目も表記にマッスルとあったのでリイシューLPを15年ほど前だったか買って持ってはいるがほとんど聴いてなかった。が、一昨年にユニバーサルの『名盤発見伝』シリーズ仕事をした、その中でリイシューされた関連盤、マーク・ベノとの asylum choir やシェルターからのソロ3枚+ライヴ盤などは見本盤として貰う。この2枚目もあり、CDでは3曲ボートラ追加(これは89年のDCC盤CDからの収録のようだ)。

レーナード・スキナードのセカンドLP『おかわり』は74年盤。亡きロニー・ヴァン・ザントは「我が心のアラバマ」という曲を作り、そのなかで "Muscle Shoals has got the Swampers" と…「マッスルには『スワンパーズ』ありき!」と歌う。いまではマッスル4人衆=ベケット/フッド/ジョンソン/ホーキンスの代名詞「スワンパーズ」はそこから知られるようになったが、もともとの言いだしっぺはレオンともデニー・コーデルとも言われる…どちらにしろ、このアルバム『レオンとシェルター・ピープル』が初出。この盤から生まれた言葉。その意味でマッスル的には「重要盤」には違いないのだが…。

アメリカンのラッセルがUK音楽界の重鎮?デニー・コーデルとつるんで興した Shelter レコード、自身作は『レオン・ラッセル』『レオンとシェルター・ピープル』『カーニー』と続いた。で、この盤は70年8月〜71年1月にかけて4カ所のスタジオで録音された盤。それが「4つのユニット」によって。おのおのに名を付けた。

The Shelter People ( don preston, joey cooper ら当時のツアーバンド)
Tulsa Tops ( jesse davis, carl radle, jim keltner, ...)
Muscle Shoals Swampers
Friends of England ( whitlock 抜きのドミノス)

アナログ収録11曲は1曲を除いてどのユニットによる録音か表記されていた。ここで、マッスル勢は Muscle Shoals Rhythm Section とされるのが常なんだが単にそれが長いと思ったか、レオンかコーデルが "swampers" _南部の腕利きらへのリスペクトも込めて、この言葉を使ったんだろう。

さて、4つのユニットで4つのスタジオ録音となれば…
 A) The Shelter People _ shelter studio, hollywood
 B) Tulsa Tops _ A&M studio, hollywood
 C) Muscle Shoals Swampers _ muscle shoals studio
 D) Friends of England _ Island studios, UK

 で、納得できそう。しかしここからちょいとややこしい。まずマッスル録音だが、メンバーは4人衆とレオン(piano, guitar, vocal) の表記。普通ならリードギタリストが誰か入るところだがレオンは弾ける男ということで。
 収録うち2曲_05 : home sweet oklahoma, 09 : she smiles a river がマッスル録音とオリジナルLP表記ではされている。が、5曲目はどう聴いてもドミノス。なにしろ次6曲目と続いてリードギターはエリック・クラプトンだ(表記無しだが間違いない)。DCC盤のCDもこの曲は(クラプトンの名前はないが)Friends of England のバックと修正されている。
 なのでマッスル録音は9曲目の1曲のみとなる。そしてこれが緩いカントリー調でマッスルらしさは皆無(Coral electric sitar を弾くのは、レオン?)。なので内容的には参考盤にするしかないということ。

マッスルを置くと、その内容は…シェルター・ピープルとのゴスペル色濃い楽曲がどうにも肌に合わない(タイトルに反して彼らとの録音は全体の半分)_生臭坊主とその信徒のような抹香臭さは、レオンの盟友だろうか、ドン・ニックス盤でも同様であったな(アラバマ・トルーパーズ等)。この一派の仰々しさに拒絶感あり。ソングライターとしては認める。この人は、UKでスワンプ教祖のような受け方をしてから勘違いと思えてならない、本来は60年代のハリウッド仕事_ポップスの人、ではないだろうか。ラッセル・ブリッジズが本流、レオン・ラッセルと名を変えてからは無理が目立ったというか…。

++++

ひとつ注意点。
DCC とは dunhill compact classics の略、業界の深掘り男ヾteve Hoffman がミキシングまで、全てを仕切ったレーベルとして知られる。DCC盤リイシューCDの記載ではジェシ・デイヴィス/ジム・ケルトナーらによる「タルサ・トップス」バックでの録音はA&Mスタジオではなくてマッスル・ショールズとされている。ボートラのディラン・カヴァー3曲と併せての4曲がすべてマッスル録音というのだが…。
 同時期のジェシ・デイヴィスのソロ作では、マッスルこそなかったがマイアミ/クライテリア録音もあったので皆でアラバマへやって来てもおかしくない気も…、しかし4人衆不参加での録音を?、わざわざというのはどうかなあ、ちょいと納得しかねる。



posted by denny-0980 at 09:36| Comment(0) | Muscle Shoals | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする