2017年10月14日

Muscle '69

boz muscle.jpg

#167
【Boz Scaggs】
produced by Boz, Jann Wenner & Marlin Greene
( '69 Atlantic)
<ー:★★★>


マッスル関連盤を並べて十数年、167枚目にしてこの盤とは。マッスルショールズと言って、話が通じるロック好き諸兄に「マッスルこの1枚は?」と問うたら、まず挙がりそうなこのボズ盤。それほどに有名なマッスル盤をスルーしてきたのは、30年前に買ったが処分してしまい手元になかったから。思い入れがなかった、というか「デュアン・オールマン」ばかりが語られるのが疎ましい盤でもあった…。
 今にして知ったのは、買ったLPがリイシューだったこと。いや、リイシューを承知で買ったが、単なるリイシューでなく「リミックス・リイシュー」であった事実を知らなかった。詳細は下に書いた通りで、69年のオリジナル盤は名手テリー・マニングによるミックスであったが数年で廃盤。世に出回ったのは77年からのリイシュー盤で、それはトム・ペリーによって remix されていた。これは、オールマン・ブラザーズ・バンドのブレイクに当て込んで_この盤でデュアン・オールマンが長尺にソロを弾きまくっていたことでそこにスポットを当ててのリイシュー。ボズのブレイクはまだ成っていなかった、あくまで「デュアンの素晴らしいセッション盤」としてまず注目された。
 トム・ペリーを責めることはできない、アトランティックとしては棚からぼた餅の盤だったので当然の処置、ボズよりも「デュアンの盤」としてリミックスを施す。

2年前にUKのエドセルが "original 1969 version" と "1977 remixed version" 、マニング盤とペリー盤とを2枚に分けて抱き合わせ、2枚組CDとして発売してくれたのを今、手にしている。やっと「本来の」LP『ボズ・スキャッグズ』を聴くことができた。
 やはり「ミックス」は大きい_マニングのネームバリューから言うわけじゃなく、オリジナルはリイシューよりもずっと良かったのだ。ここでやっと、マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオの最初期(69年春にオープンして、これは夏の録音)録音盤を堪能できる。
 ただし…ここにはピート・カーはいない。エンジニアもマーリン・グリーンで、メルトン/マスターズのコンビでもない。マッスルスタジオの口開け時であり、全盛期はまだ先のこと。グリーンが当初のエンジニアであったがこのスタジオでの仕事は2年あったかどうかだったと思う。
 最近の話題で、雑誌「ローリング・ストーン」の身売り話があった。創業者ヤン・ウェナーの名前を久しぶりに聞いたが、そのウェナーがこの盤のプロデューサーであった。シカゴでスティーヴ・ミラーとやっていたボズが流れた先のサンフランシスコ、その地で雑誌を立ち上げたウェナーとの関係はフリスコ・ロックとして浅くなかっただろう。
 フリスコ前に北欧へ流れて彼の地オンリーのアルバム、フォーキーな弾き語り盤(ウルトラレアだったがCD化)があったボズだがそれは小手調べとして実質の「デビュー盤」はこれとしていいだろう、この後『my time』で再びマッスル録音があった、自身の音楽性との相性の良さを最初に示した好盤といえる。

バックはマッスル四人衆が張り切ってお仕事、そりゃそうだろう、自前スタジオが始まったばかりなのだから。ギターはジョンソン以外にデュアン、ヒントン、ボズも。ボズは結構弾く人だからこの盤でもヒントンのプレイと思われている箇所がかなりボズ本人のギター…とみた。
 コーラスに、シェール盤に続いて Donna Thatcher の名が。後にシスコへ行ってキース・ゴドショウと結婚、夫婦でデッドに参加した、あのドナ・ゴドショウその人。マーリンの奥さんのジーニー・グリーンは分かるが、トレイシー・ネルソンがマッスルへ出張りというのは珍しい_いやいや、これはフリスコ・オーバーダブだねきっと。

++++++


と…戸…都……。ここまで書いてさぁアップすっかな…と思ったがジャケ写を入れねばと気づき、スキャンも面倒ゆえネット拝借しようとしたわけで。そこでえらいコメントを見つけちまったよ!_「このエドセル盤、アホもたいがいにせ〜よ、盤面表記が『逆』であるぞ! original 1969 version となっているほうが77年リイシュー音源なのだ。ゆめゆめ『オリジナルが最高じゃん』などと吹聴して赤っ恥をかくなかれ…」とな! でもってwiki を見直せば、"Boz Scaggs (album)" の項目にもちゃんと書いてあったわ_「Edsel mislabeled the discs... 」と。
 怖い!怖すぎる…。すんでの所でやっちまうところだったではないか。てか、もうやっちまってるし。なにが「名手マニング」だ…、それはトム・ペリーのミックスだってよ〜! 我、じっと手を見て涙ス…これまでもどれだけいい加減なことを書いてきたことか…。
 斗、少しだけ思ったがこれぐらいではめげない、だいたいシロウトのブログなんてこの程度/常に眉にツバつけて読んで頂きたい所存でござる。
 とりあえずは自己検証をしようと思い立ち、三十数年前に池袋オンステージヤマノで買ったUSのリイシュー盤、とうの昔に処分してしまった盤、そこから "I'll be long gone" だけは焼き残しているのでその音をエドセルの2枚の同曲とで聴き比べてみた。
(A) USリイシュー・アナログ
(B) エドセルCD "original 1969" と書いてある盤
(C) エドセルCD "1977 remix" と書いてある盤

(A) と (B) にくらべて (C) 、楽器定位/分離の激しいテイクになっている(左右振り分けでボズの歌のみがセンターにある)。なるほど、たしかにエドセル盤表記はミステイクですわ。
 が、よくよく聴くに…同じのはずの (A) と (B) 、近い、が「違う」。まったく同テイクではない。顕著なのはロジャー・ホーキンスのドラムのパン位置/定位。センターを0度として左右目一杯に振ったところを90度とする。
(A) 左40度
(B) ほぼセンター0度
(C) 右85度

深い、ミックス(リミックス)は深すぎる…。それは兎も角、なんだかんだ言って、やはりこの盤は "I'll be long gone" に尽きる。



posted by denny-0980 at 07:59| Comment(0) | Muscle Shoals | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年10月05日

Streetwalkers

Chap_streetwalkers.jpg


コッシュによるチャップマン=ホイットニー盤。"walker" というより "runner" だが_。一点透視でシンメトリー/読みにくい壁文字/奥の建物のみカラーで他がモノクロ…ぱっと見では「おお、典型的なヒプノシス・ジャケ」_走るふたりに漠然とストーリー性を持たせているところも…。コッシュには珍しい、ヒプノシス的なデザイン。ただしモノクロ仕事では『Tony Ashton & Jon Lord / first of the big bands』のほうがいい出来。

そのトニー・アシュトンはアシュトン、ガードナー&ダイクで知られ…ないか。Family にも_『it's only a movie』に参加。コッシュはファミリー・ラスト3枚『fearless』『bandstand』(これは名手コッシュ作のなかでもベストに近い傑作デザイン!)『it's only a movie』のジャケットも手がけていた。ファミリー周辺のジャケ仕事をよくやっていたことになる。それとこの時期のファミリーにギターで参加していたのがジム・クリーガンで、コッシュはその妻だったリンダ・ルイス盤2枚、そしてクリーガンが、現在まで続くから40年越しの付き合いのロッド・スチュワートのジャケも手がけていた。やはりクリーガンが参加したスティーヴ・ハーリー(&コクニー・レベル)のソロも…。クリーガン関係盤を多く手がけたコッシュ…という印象も強い。友人だったのだろうか。

posted by denny-0980 at 15:28| Comment(0) | Kosh | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

another side of UK Rock

ロジャー・チャップマンが好きなんだ。musician's musician? ついぞビッグネームにはなれなかったが…ルックスかな、問題はそれだけでしょ? Family のレコはいい。

久々にコッシュ、John Kosh design 盤を見つけたら、それがチャップマンのレコだった。コッシュ_前ブログ(whink.seesaa.net)を見てもらうとどれだけ大物ジャケを手がけたデザイナーか理解していただけよう。大物仕事も多かったが、裏組のジャケもまた多かったのだ。

California Comes to The Old Grey Whistle Test
https://youtu.be/cneO7RQe_xY
このなかの、ティム・バックリーに注目。これはアルバム・プロモーションのための渡英時のスタジオ・ライヴ。なので英国勢がバック。
guitar : charlie whitney
bass : tim hinkley
drums : ian wallace

このバック3人の名前、UKロック・レコのどれかで見ていよう。ジョン "charlie" ホイットニーといえばセッションもあるが、ファミリーである。つまりは、Family とはチャップマン=ホイットニーの「ふたりプロジェクト」と断言ス。歴代いろいろな顔が出入り。ジョン・ウェットンのデビュー・バンドとしても知られるファミリー(実はその前に1枚あったが)だが、ウェットン始め歴代メンバーはすべてトラである/セッション参加であった。それゆえアルバム毎にメンバーは代わった。
 

chapman-whitney.jpg


Family として73年盤『it's only a movie』を出して解散。翌74年に出したのはチャップマン=ホイットニー名義で『streetwalkers』、まあ別に体勢をはっきりさせただけで変わりはなかった。Streetwalkers はそのままバンドとなるがそこでも入れ替わり立ち替わりだからやはり何も変わっていなかった、チャップマン=ホイットニーとトラ・メンツというだけのこと。しかしこの時期のメンツを見てもらえばUSロック裏街道の名だたる顔が総集合。もちろんファミリー時期とも重なるわけだが。となれば、ロジャー・チャップマンの一声でどれだけのメンバーが馳せ参じたことか_これらの顔ぶれは以下のパフォーマーと絡んでいたのだからUK王道を支えた強力メンツの実力が知れようというところ…。


Family, Jeff Beck Group, Rod Stewart, Hummingbird, King Crimson,
Camel, Alvin Lee, Blind Faith, Roxy Music, Traffic, Yes, Vinegar Joe,
Monty Python, Bee Gees, Kokomo, Grease Band, Arrival, Humble Pie,
Cockney Rebel, Bad Company, Hanson .... more

(なぜにビージーズかというと、Blue Weaver …この人はアンディ・フェアウェザーとのエイメン・コーナーから始まって、ディスコのブームまっただ中だったビージーズのステージ/レコーディングを支えた)


posted by denny-0980 at 06:42| Comment(0) | Kosh | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする