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【the best of Wilson Pickett】
( '74 Japan Atlantic)
過去この人の盤はRCA時代の2枚とりあげた。74年盤『pickett in the pocket』はなかなかの盤だったが、基本的には苦手な部類_シャウター、それも絶叫付きとなると…。なので、調べればあと3枚のマッスル関連盤があるが、この盤をレビューして仕舞いとしよう。
これは日本独自編集・制作のベストLP。「ダンス天国」「in the midnight hour」「mustang sally」「funky broadway」などを当然含む全12曲、すべてatlanticでの楽曲盤だが選曲はけっこう良い。が、カッティングレベルが低く音が悪い、売りのシャウトがかなり中途半端な音圧。
RCA期よりも当然ピケットのベストはこのアトランティック時代。NY録音から始まってウェクスラーがマッスルへ〜 Fame 録音ありはもちろん知っていたがこのベスト収録のライナーをみると驚くほど幅広く各地で録っていた事実、知らなかった。
メンフィスの Stax Studio, American Studio /マッスルの Fame, Muscle Shoals Sound Studios /マイアミ Criteria /フィリー Sigma Studio 、それとNYで、全12曲が都合7スタジオ録音でのコンピレーション。もともと生まれがアラバマ。南部は地元ということか。
紹介したRCA期2枚はプロデュースがマッスル大贔屓プロデューサーのブラッド・シャピロだったから当然マッスル録音だったが、じつはアトランティック時代にもシャピロ仕切りのマッスル盤があった_71年『don't knock my love』。ジミー・ジョンソンは卓に回って、リズム隊はホーキンス/フッド/ベケット+ティッピー・アームストロング、ホーンはメンフィス・ホーンズと面子はいい。しかし、ここにエディ・ブラウン/デニス・コフィ/ジャック・アシュフォード…なぜかモータウン・バックのデトロイト勢が加わっている。このベスト盤収録は1曲のみだがそれを聴くに、コフィのギターからしてあきらかにモータウン・サイケ・ソウル=テンプスの曲もどきなのだ。UTで他の数曲もあるので聴いてみたがやはりマッスルの音というよりもデトロイト勢がリードしている、ノーザンな音作りでマッスルらしさはなかった。
クライテリア録音も1曲収録_アーチーズ・カヴァー "sugar sugar" 。バブルガム・ヒットだがこういう幼稚な曲を黒くカヴァーというのはよくあったこと。で、ここでも出来はなかなか。これが意外なバックトラックだった。ジョンソン/ホーキンス/フッド/ベケットでリード・ギターはエディ・ヒントン。ばっちりなマッスル・リズム隊なのに、スタジオがマッスルではなくてクライテリア。まあ四人衆の出張りセッションは無かったことじゃないけれど、全員揃って出張るとは珍しい。ほかにはアリーサ&ローラ・ニーロの録音のためにNYへ赴いたぐらいだったはず。ネチると収録盤は70年『right on』で、1曲のみ Fame /残りはすべてクライテリア録音、その半分がマッスル隊バック、半分は地元リズム隊。
最後はシグマ録音。曲、プロデュースともにギャンブル&ハフ。これもネチると『 in Philadelphia』という盤があって全曲シグマ録音らしい。しかしシグマ=フィリー・ソウルのソフィスティケイトと対極のピケット・ヴォイスはお世辞にもハマった感無し…。これは違う。