
#159
【Bobby Womack/Communication】
produced by Free Productions & Muscle Shoals Sound
( '71 United Artists)
<ー:★★★★★>
まだ入れていないウォマックのマッスル盤が2〜3枚あるんだよな。
マッスルショールズ・スタジオの贔屓といってまず挙がる名前はボブ・シーガーなんだが、シーガーの場合、1枚のアルバムはマッスル/デトロイトで半々が常。となると実際にマッスルスタジオを最も長く(多く)ブッキングしたのはこのウォマックだろう。これからマッスルショールズを話題にする際には「Muscle Shoals Sound Studios を最も贔屓にした男は Bobby Womack」…忘れることなかれ。
ジミー・ジョンソンはもちろん、エディ・ヒントン/ピート・カー/ケニー・ベル/ティッピー・アームストロング/ウェイン・パーキンス…ほとんどのギタリストを使ったウォマックだったが多かったのがティッピー・アームストロングで、この盤もリードはティッピー担当。ウォマック自身も優れたギタリストなので、相性としてティッピーが一番ハマったんじゃないだろうか。
プロデュースは自身という事で、つまりはマッスルでの録音盤の意味。マッスル四人衆+ティッピー+マッスル・ホーンズによるバッキング、マッスルの Groove を最大限に引き出すのがウォマックなのだ_素晴らしいバックトラック。
メロディアスなナンバーと語り口の二本立ては毎度毎度のお約束、前盤のローラ・ニーロに近い構成なんだが、違う点は…この人にダウンな感情はまるで見られずどちらにしろ「男気」…魅惑のヴォーカルはかなりマッチョ/マチズムあふれる仕上がりが常。
この盤もB面はモノローグから始まるが、こういう語りはあらかじめ用意した言葉なのだろうか。何も無しで、マイクの前でいきなり始まってしまうのでは。後で聴き返して恥ずかしくなるようでは凡人なのだろう_てか、録音が終わると一切自分のレコなど聴かない人だったんじゃなかろうか。
バカラック/ティンパン系/ソフトロック…分からないのは「真っ白」な楽曲カヴァーがやたら多かったこと。Isleys にもその傾向は見られたが何なんだろう。単なる好きな曲なのか_それとも、白人マーケット向けに自選?レコ会社からの押しつけ? それでも元は白い曲でも真っ黒に歌うのだから、やはり白人マーケットは関係なかったのかもしれない。この盤ではジェームス・テイラーとカーペンターズと…もう1曲は前年70年の全米1位「レイ・スティーヴンス/みんなビューティフル」だから驚いてしまう。
四の五の言ってもやはりウォマックに駄作無し_この盤も素晴らしい。Groove Master ぶりは、個人的にはルーサー・イングラム(この人も大のマッスル贔屓だった)とふたり…最もハマったブラックパフォーマー。
駄曲無しのなか、ベストテイクはA4 "(if you don't want my love) give it back" 。3分弱は短すぎる、倍の尺で聴きたい。この曲、短期間に何度も録った_ウォマックにとっても大事なナンバー。
同71年、ハンガリー出身ジャズ・ギタリスト、ガボール・ザボの【high contrast】はトミー・リプーマのプロデュースの好盤だがこれ、ザボ&ウォマックの名義でもよかったほど貢献。後にジョージ・ベンソンのカヴァーが世界的なヒットになった "breezin' " から始まり、同曲含めて7曲うち4曲はウォマック作、全曲インスト盤だがギタリストとしても全曲参加している。自作4曲から "Communication" "if you don't want my love" 2曲を持ち出しでそのまま歌ったのがこのソロ盤ということになる。
"if you don't want my love" 、翌72年にウォマックが音楽を担当した映画【Across 110th Street】サントラでもリレコして3度目。75年盤、ウォマックとは兄弟仁義を交わしたロニー・ウッドの【Now Look】では共演、そのカヴァーが4度目だった。
PETE CARR/MUSCLE SHOALS ARCHIVES back number :
001-127 / 128-157