2015年01月17日

if you don't want my love


bobbyW_commu.jpg

#159
【Bobby Womack/Communication】
produced by Free Productions & Muscle Shoals Sound
( '71 United Artists)
<ー:★★★★★>

まだ入れていないウォマックのマッスル盤が2〜3枚あるんだよな。
マッスルショールズ・スタジオの贔屓といってまず挙がる名前はボブ・シーガーなんだが、シーガーの場合、1枚のアルバムはマッスル/デトロイトで半々が常。となると実際にマッスルスタジオを最も長く(多く)ブッキングしたのはこのウォマックだろう。これからマッスルショールズを話題にする際には「Muscle Shoals Sound Studios を最も贔屓にした男は Bobby Womack」…忘れることなかれ。
ジミー・ジョンソンはもちろん、エディ・ヒントン/ピート・カー/ケニー・ベル/ティッピー・アームストロング/ウェイン・パーキンス…ほとんどのギタリストを使ったウォマックだったが多かったのがティッピー・アームストロングで、この盤もリードはティッピー担当。ウォマック自身も優れたギタリストなので、相性としてティッピーが一番ハマったんじゃないだろうか。
プロデュースは自身という事で、つまりはマッスルでの録音盤の意味。マッスル四人衆+ティッピー+マッスル・ホーンズによるバッキング、マッスルの Groove を最大限に引き出すのがウォマックなのだ_素晴らしいバックトラック。

メロディアスなナンバーと語り口の二本立ては毎度毎度のお約束、前盤のローラ・ニーロに近い構成なんだが、違う点は…この人にダウンな感情はまるで見られずどちらにしろ「男気」…魅惑のヴォーカルはかなりマッチョ/マチズムあふれる仕上がりが常。
この盤もB面はモノローグから始まるが、こういう語りはあらかじめ用意した言葉なのだろうか。何も無しで、マイクの前でいきなり始まってしまうのでは。後で聴き返して恥ずかしくなるようでは凡人なのだろう_てか、録音が終わると一切自分のレコなど聴かない人だったんじゃなかろうか。

バカラック/ティンパン系/ソフトロック…分からないのは「真っ白」な楽曲カヴァーがやたら多かったこと。Isleys にもその傾向は見られたが何なんだろう。単なる好きな曲なのか_それとも、白人マーケット向けに自選?レコ会社からの押しつけ? それでも元は白い曲でも真っ黒に歌うのだから、やはり白人マーケットは関係なかったのかもしれない。この盤ではジェームス・テイラーカーペンターズと…もう1曲は前年70年の全米1位「レイ・スティーヴンス/みんなビューティフル」だから驚いてしまう。

四の五の言ってもやはりウォマックに駄作無し_この盤も素晴らしい。Groove Master ぶりは、個人的にはルーサー・イングラム(この人も大のマッスル贔屓だった)とふたり…最もハマったブラックパフォーマー。
駄曲無しのなか、ベストテイクはA4 "(if you don't want my love) give it back" 。3分弱は短すぎる、倍の尺で聴きたい。この曲、短期間に何度も録った_ウォマックにとっても大事なナンバー。
同71年、ハンガリー出身ジャズ・ギタリスト、ガボール・ザボの【high contrast】はトミー・リプーマのプロデュースの好盤だがこれ、ザボ&ウォマックの名義でもよかったほど貢献。後にジョージ・ベンソンのカヴァーが世界的なヒットになった "breezin' " から始まり、同曲含めて7曲うち4曲はウォマック作、全曲インスト盤だがギタリストとしても全曲参加している。自作4曲から "Communication" "if you don't want my love" 2曲を持ち出しでそのまま歌ったのがこのソロ盤ということになる。
"if you don't want my love" 、翌72年にウォマックが音楽を担当した映画【Across 110th Street】サントラでもリレコして3度目。75年盤、ウォマックとは兄弟仁義を交わしたロニー・ウッドの【Now Look】では共演、そのカヴァーが4度目だった。


PETE CARR/MUSCLE SHOALS ARCHIVES back number :
001-127 / 128-157



posted by denny-0980 at 10:11| Comment(0) | Muscle Shoals | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月11日

マッスル出張り盤


laura_Xmas.jpg

#158
【Laura Nyro/Christmas and the beads of sweat】
produced by Arif Mardin and Fellix Cavaliere
( '70 Columbia)
<ー:★★★★>

長いこと聴いている盤だがマッスル関連ではあるから、やはり入れておく。
ローラ・ニーロという人は個人的には大好物で…。その歌い方、地声/裏声の出入りがたまらなく好きだ。曲は、やたらメロディアスな物とメロが分からないようなつぶやきローラ節が交互に来る(多くのカヴァーは当然前者)。精神的なアップダウンがそのまますべて出るタイプなのだろうか_初期遠藤賢司的であるな。
駄作を「作れなかった」才人だが、この盤もイイ。A面がマッスル勢でB面はNYメンツ_演奏を堪能する意味では、一粒で二度美味しいグリコみたいな盤。
手書きクレジットはミスも多いが、A面記載ではホーキンス/フッドのリズム隊にエディ・ヒントンのギター。ジミー・ジョンソンの名はなく、バリー・ベケットは Vibes とあるのみ。ピアノはローラ本人が弾く/オルガンはキャヴァリエなので仕事がなくなったか_絶妙のカヴァー "up on the roof" でのヴィブラフォン?
ヒントンが、ソロはないが素晴らしいオブリガードで彩る、光る。B面のギタリスト_コーネル・デュプリも同質なプレイで、聴き比べもよし。

マッスル勢の参加盤ではあるが場所はアラバマではない。A面もNY録音。
となればお旦≠セったジェリー・ウェクスラーのお座敷というパターンでNY出張りの一環、アリサ・フランクリン録音の裏仕事ではないだろうか。本来ならば Atlantic アーティスト盤への参加だが、これはコロンビア盤。それはプロデュースがアリフ・マーディンゆえ_「こっちもちょいと手伝ってくれよ」とウェクスに一声かければOKてなもんであったろう。
デュアン・オールマンも参加。A面でなくNYバックのB面の "beads of sweat" 1曲で弾く、ソロイストとして仕事。ガンガンにシンコペートするチャック・レイニーのベースとデュプリのカッティングに乗ってのソロは、ボズ・スキャッグズ盤の "loan me a dime" を彷彿させる弾き_尺は長くないがデュアンらしさ全開。



posted by denny-0980 at 08:35| Comment(0) | Muscle Shoals | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする